再婚家庭では、相続や遺言の悩みが複雑になりやすいものです。
「前妻との子にも配慮したい。でも今の妻の生活も守りたい」
そんな相談が年々増えています。
今回は、再婚した70代男性Tさんからのご相談をもとに、
再婚家庭が遺言書を作る際に気をつけたいポイント をまとめました。
同じようなお悩みをお持ちの方の参考になれば幸いです。
相談者の背景(Tさん・70代男性)
- 再婚して十数年
- 前妻との子どもが2人
- 今の妻との間に子はなし
- 主な財産:自宅、預金、株式(総額約4,000万円)
- お悩み:
・妻が安心して暮らせるようにしたい
・前妻との子たちにも不公平にしたくない
・将来相続で揉めてほしくない
再婚の場合、
「今の妻」も「前妻との子」も全員が相続人になるため、
遺言を残さないとトラブルが起きやすい状況です。
再婚の場合、遺産は誰が相続する?
再婚であっても、今の妻・前妻との子ども全員が相続人になります。
法定相続分は以下のとおりです:
- 妻:1/2
- 子ども(人数に関係なく):合計1/2(人数で割る)
今回のケースでは子どもが2名であるため、
妻1/2、子ども1人あたり1/4 です。
遺言がないと、この割合で自動的に相続されます。
今の妻に自宅を残したい場合、どうすればいい?
再婚家庭でよくある悩みが、
妻に今の家でそのまま暮らしてほしい
というものです。
遺言で自宅を妻に遺すこと自体は可能ですが、
自宅の価値が大きいほど、子どもたちが不満を持ちやすくなります。
Tさんの場合:
- 自宅価値:2,500万円
- 遺産総額:4,000万円
- 妻の法定相続分:2,000万円
→ 自宅だけで法定分を超えてしまうため、
遺言なしではトラブルの可能性が高い状況でした。
前妻との子の「遺留分」も考えないといけない?
はい。再婚家庭の場合、特に注意が必要です。
遺留分=法定相続人が最低限もらえる取り分
今回のケースでは、相続人は「妻」と「前妻との子ども2名」です。
- 遺留分の全体:遺産の1/2(= 2,000万円)
したがって…
| 相続人 | 法定相続分 | 遺留分割合 | 遺留分額(遺産総額4,000万円の場合) |
|---|---|---|---|
| 妻 | 1/2 | 1/4 | 1,000万円 |
| 子ども① | 1/4 | 1/8 | 500万円 |
| 子ども② | 1/4 | 1/8 | 500万円 |
子どもの遺留分は、今回のケースでは
→ 子ども1人あたり 1/8(約500万円)
つまり、
遺留分の500万円を下回る内容だと、後から子ども側が請求する可能性があります。
妻を守りつつ、子どもにも不公平にしない遺言の例は?
今回のケースで最終的に決定した遺言内容は次のとおりです:
- 妻
→ 自宅(2,500万円)
→ 預金の一部・株式など - 前妻との子ども2名
→ 遺留分にあたる500万円ずつ(合計1,000万円)
この形にすることで、
- 妻は自宅で安心して暮らし続けられる
- 子どもは遺留分が確保される
- 争いのリスクが大きく減る
というバランスが取れます。
子どもが納得しやすくするための方法は?
付言事項(ふげんじこう) の活用がおすすめです。
遺言の本文とは別に、
- 妻に自宅を遺す理由
- 子どもたちへの感謝
- 不公平にならないよう配慮したこと
- 皆が争わないように願っていること
など気持ちを言葉として残せます。
再婚家庭ほど、付言事項が相続トラブルの予防に大きな力を発揮します。
再婚の場合は「公正証書遺言」が良いの?
結論:再婚家庭では、公正証書遺言が必須レベルでおすすめです。
理由:
- 自筆遺言は無効リスクが高い
- 再婚家庭は争いが起こりやすい
- 公正証書遺言は偽造・紛失の心配がない
- 公証人が法律的に正しい形式で作成
- 遺言執行がスムーズ
特に今回のように
- 妻と子の関係が薄い
- 全財産に占める不動産の価値割合が高い
- 相続人の人数が複数
という場合は、公正証書遺言が最も安全です。
遺言執行者は誰に頼むのがいい?
再婚家庭では、専門家(第三者)を強く推奨します。
理由:
- 妻と前妻との子が直接やりとりするのは負担が大きい
- 感情的な対立が生まれやすい
- 相続手続きは専門的で複雑
行政書士などの第三者が間に入ることで、
家族間のストレスを大きく減らすことができます。
【まとめ】再婚家庭の遺言は「家族の調和」を守るための大切な準備
再婚家庭は、
法定相続人が増える・感情が複雑になる・自宅の扱いで揉めやすい
という特徴があります。
そのため、以下の3点を意識した遺言が重要です:
- 法定相続分・遺留分の理解
- 自宅と現金のバランス調整
- 公正証書遺言+付言事項+遺言執行者の設定
こうすることで、
家族が穏やかに相続を迎える環境を整えることができます。
行政書士はらしま事務所では、再婚・相続・遺言のお悩みに寄り添い、最適な方法をご提案します。
- 遺言作成サポート
- 必要書類の収集
- 公証役場との調整
- 証人の手配
- 遺言執行者の受任
など、必要に応じてお任せいただけます。
初回のご相談は無料です。どうぞお気軽にご相談ください。
