相続が発生した時、まず確認しなければならないのが「故人が遺言書を残していたかどうか」です。この確認が相続手続きの方向を大きく左右します。遺言書がある場合は、遺言書に記載された内容に従って相続手続きを進めることになり、これを「遺言執行」と呼びます。反対に、遺言書がない場合は、相続人全員が集まり「遺産分割協議」を行い、誰がどの財産を相続するかを話し合いで決めなければなりません。遺言書があるかどうかで手続きが大きく変わるため、この調査は非常に重要です。
今回は、遺言書の有無を確認するための基本的な方法をご紹介します。相続手続きに不安を感じている方、ぜひ参考にしてください。
遺言書にはどんな種類がある?
遺言書にはいくつかの種類がありますが、一般的によく使われているのは次の2種類です。
1. 自筆証書遺言
自筆証書遺言は、文字通り故人が自分で書いた遺言書です。紙とペンとハンコさえあれば作成できるので、手軽に書ける一方で、書いたこと自体を誰にも伝えていないケースも多いため、相続人にとっては発見が難しいこともあります。
2. 公正証書遺言
公正証書遺言は、公証役場で作成される遺言書です。公証人が関わるため、形式や内容に不備が少なく、遺言書として確実性が高いのが特徴です。遺言書が公証役場に保管されているため、亡くなった後でも比較的簡単に確認できます。
自筆証書遺言を探す方法
自筆証書遺言は自宅や身の回りに隠されていることが多いです。次のような場所をチェックしてみてください。
☑仏壇やタンスの引き出し
☑書斎やデスク
☑日記や本のページの間
☑衣類のポケットやカバン、スーツケースの中
☑金庫
さらに、故人が親しくしていた友人や知人、もしくは付き合いのあった銀行、士業、その他専門家がいれば尋ねてみるのも一つの手です。生前に相談していた可能性があります。
また、令和2年7月10日から、自筆証書遺言を「遺言書保管所」に保管できる制度が始まりました。この保管所を利用している場合、遺言書情報証明書の交付や遺言書保管事実証明の請求を行うことができます。
公正証書遺言を探す方法
公正証書遺言は公証役場で作成・保管されています。平成元年以降に作成された遺言書は、全国どこの公証役場でも「遺言検索システム」を使って調べられます。検索を申請する際には、故人の死亡が記載された戸籍謄本、相続人自身の本人確認書類(運転免許証やマイナンバーカードなど)、相続人であることを証明する戸籍謄本などの書類が求められます。平成元年以前の遺言書は、作成した公証役場に直接問い合わせる必要があります。公正証書遺言が見つかれば、その内容に従って相続手続きをスムーズに進めることができます。
遺言書が見つからない場合の対策
もし、遺言書が見つからなかった場合でも焦らないでください。遺言がないことを前提に、相続人全員で遺産分割協議を進めることができます。ただ、遺言書の有無を確認することが、相続手続きの第一歩であることは間違いありません。調査が大変に感じるかもしれませんが、きちんとした手順を踏むことで、後のトラブルを防ぐことができます。
まとめ
遺言書の有無を確認することは、スムーズな相続手続きに欠かせません。遺言書があるかどうかで、相続の進め方が大きく変わるため、早めに確認することが重要です。故人の自宅を探したり親しかった方や専門家に確認するほか、公証役場や遺言書保管所の制度をうまく活用して、確実な相続手続きの準備をしていきましょう。
行政書士はらしま事務所では、公正証書遺言の検索の代行にも対応いたします。遺言書の有無の確認や、相続手続き全般に不安を感じている方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
遺言の調査は手間がかかる場合もありますが、確実に相続を進めるためにとても大切なステップです。この機会にぜひお役立てください。